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小学校 英語 教科化はメリットある?英語の教育はいつから始める?

書評教養
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今回は英語教育についての本をレビューします。

英語教育幻想 久保田竜子 ちくま新書

著者はカナダブリティッシュコロンビア大学で応用言語学の教授を勤めています。専門は言語教育で、アメリカとカナダの大学で日本語教育、英語外国語教員教育に携わっています。

「英語学習はできるだけ早く始めた方が良い」、「英語は英語で学んだ方が良い」「英語ができれば就職に有利」といった一般的な考えに対する知見、を国内や海外の研究の動向を踏まえて解説したものです。

この本は次のような人に有益な視点を提供できると冒頭で述べています。

英語教育に興味がある読者全て
特に英語を教えている 教員
教員の養成に携わる教育者
教育政策担当者 など

では、内容を見ていきます。

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小学校 英語の教科化の背景

私が最も疑問に思っていた部分は「子供の英語教育は早いほど良いのか?」ということです。
乳幼児期からの早期の英語教育のメリットを宣伝する教材の広告を目にすると、早いうちから始めた方が学習効果が高い、受験や就職など将来英語が必要とされる場面で苦労しない、という印象を抱いてしまいます。
英検に低年齢で合格した新聞記事なども同封されており、「我が家もやらなければ」という気になってしまいます。
小学校でも英語の授業が組み入れられ、2020年からは大学入試にTOEFLや英検などの外部試験が導入され、英語教育は過熱する一方です。
しかし、本書で紹介されていたことは「やはり」と思いました。
すなわち、小学校への英語学習の導入は経済界の意向も反映されているということです。
英語教育の必要性を高めることで、塾や出版業、テスト業界など英語教育に関するあらゆるビジネス産業に利益がもたらされます。
英語の試験の運営母体についても本書内で述べられています。
英語が上手になれば経済的に成功すると言う幻想は英語の産業やメディアに煽られている部分があるのではないでしょうか。

小学校の英語教育はメリットがあるのか?

小学校から?中学校からでは遅い?

小学校での英語教育の効果はどうなのでしょうか?

以下は本書で英語教育についての研究として紹介されていたものです。

8歳から英語を学び始めたグループとそれより後(11,14,13,18歳)から学び始めたグループを比較した研究では、幼い方が良い成績をおさめるという現象は見られませんでした
引用されている海外での英語教育の研究データでは、小学校から英語を学んでいたグループと中学校から始めたグループの英語熟達度を比較したところ、1回目の測定時でさえ中学校開始グループは小学校開始グループに追いつき、約6年後の測定では両者の間に有意な差は見られませんでした。
また、学習開始年齢と習熟度との間には相関関係がないという結果でした。
一方、授業外の学習活動(塾など)や短期留学にかける時間などとは優位な関係があったと言う結果も報告されています。
英語は学習を開始した年齢よりも、学習の量、質、集中度(モチベーション)が影響するということでした。

英語ができないと思う理由

「外国語不安」、すなわち言語学習に対する不安や緊張、焦りなどに対する研究についても紹介しています。
「英語に苦手意識があるとできるようにならないのでは」と思ってしまいますよね。
だから早く始めれば苦手意識を持たずに身に付けられるのではないかと。

アメリカの教育心理学者の研究では
「外国語不安が言語習得のマイナス要因を引き起こすのではなく、言語習得が思うようにはかどらないことが外国語不安をもたらすのではないか」と推測しました。
つまり、「苦手意識があるからできない・わからないのではなく、わからないから苦手意識を抱く」ということです。
では「英語ができない」理由は何でしょうか?
それは、研究により母語の基本的な読み書き能力が外国語の四技能と相関関係があるということがわかってきました。
例えば文字と音との関係を認識する能力につまずきがあると、「読字障害」や「発達性読み書き障害」といった学習障害となります。
母語の場合は多少のつまずきああっても根気よく学ぶことで平均的な読み書く能力を発達させることができますが、まったく異なる言語学習では小さな弱点が表面化してしまうこともあると述べられています。
つまり「英語以前に日本語の問題」というわけです。

対処法として、資格や聴覚、触覚や動作など複数の感覚を使った指導法が有効と挙げられています。
動作やフォニックス、文法構造をわかりやすく教える方法も効果的なようです。

英語の教育はいつから始める?

また、上述の研究からは「12歳ごろに文法や語彙の習得度が大きく伸びる」という研究結果も得られました。
すなわち「12歳ごろに言語の習得にとって重要な力が伸びてくるので、焦りすぎないこと」が大切ということです。
小学生までの英語は「嫌いにならない程度に親しむ」
中学校以降は将来を見据え、自分でモチベーションをもって質・量の高い学習をすれば早期学習組と差はなくなるということかもしれません。

「最年少で英検〇級合格!」という新聞記事を目にすると、素晴らしいことだとは思います。
本人がやる気をもって取り組み、成果を出したのであれば、達成感や自信につながることでしょう。
しかし、英検2級などの試験では純粋な英語能力以外にも社会や文化、科学的知識などが必要になります。
ある程度の労力をかけなければ合格することは難しく、決して楽に合格できるようなものではありません。
幼少期に英検を取得することを全面否定するわけではありませんが、暗記を強要し、多大な労力をかけてまで目指すものではないと思います。

まとめ

英語は0歳からやらなきゃ!3歳で耳は固まってしまってネイティブ並みの聞き分けはできなくなります!と、教材販売の営業者はよく言うフレーズです。
確かに3歳で聞き取りの臨界期があるにせよ、それがその後の人生にそこまで大きく影響するのか。
小学校で英語が教科化されたらといって、ではみんな英語教室に通う必要があるのか。
高額な教材や塾を迷われている方に、こちらの本を一度読まれると参考になるかもしれません。
(私はこれで迷いが吹っ切れました)

 

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