書評 「コンサルタントの暴露:御社をつぶしたのは私です」

書評 「コンサルタントの暴露:御社をつぶしたのは私です」 1 教養
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以前テレビのニュースで「学生の就職先で今はコンサルティング企業が人気です」と報道されていました。
コンサルタントと聞いても今ひとつ具体的に想像できず「どんな職業なのかな?」と興味を持っていました。
今は経済・経営の勉強もするようになり、今回この本を読むことにしました。

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従来のビジネス常識の誤り

タイトルはこちら

「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」
コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする カレン・フェラン著 大和書房 2013年

著者はマサチューセッツ工科大学(MIT)および同大学院を卒業後、大手コンサルティングファームを渡り歩いた経営コンサルタント。約30年のキャリアと豊富な経験をもつ実力派ですが、自分自身とコンサル業界が冒してきた恐るべき過ちの数々を大暴露する、という内容です。

経営コンサルタントとは

経営コンサルタントは大きくとらえると「クライアントに価値を提供する職業」といえます。
戦略の開発や業務プロセスの改善、数値目標などによる業務管理、マネジメント、人材開発といった分野で、クライアントの業績改善に向けた取り組みを行っています。
手法としては論理的な分析とさまざまなモデルや理論を駆使し、あらたなモデルや理論の構築を行っています。
マッキンゼーなどの大手法人のコンサルタントのイメージとしては、ロジカルシンキング、フレームワーク思考、フェルミ推定などを使いこなす「優秀なビジネスパーソン」という姿が浮かんできます。

本書ではそのモデルや理論が効果的に機能しなかった事例が豊富にあげられています。
問題の分析とそれらの問題に面した時に著者がどのような行動をとったのか、どのような行動が解決につながるのかが示されています。
まず著者への感想としては「実績もあるが本人も大変勉強している努力家」というものです。
特筆すべきは、この本自体が暴露といいながら経済学の教科書としても読めるということです。
経済学の研究者とその著作、理論について歴史に順を追って解説されています。

戦略という落とし穴

第1章の始まりは、1980年代の戦略コンサルタントの時代の幕開けから紹介されています。
ハーバード大学のマイケル・ポーターは「競争の戦略」において次のような戦略策定の方法を提唱しました。

○業界分析(既存の競合企業の競争や新規参入企業の脅威、代替品の脅威など)を行うこと
○自社の業界内での立ち位置によって戦略を決定し競争優位性の確立を目指すこと

しかし、戦略優先主義の失敗例はこうでした。
●一つの戦略にこだわったがために新しいチャンスを逃し、競合企業に敗れた
●未来予測に失敗し、顧客の利益に結びつかないコンサルティングとなった

その理由として、完璧な未来予測など不可能であるという事があげられています。
今後の経済状況や業界変化、競合他社の動向や顧客のニーズを正確に予測できることが戦略策定の前提となっています。しかし、例としてリーマンショックのような事態は高学歴の専門家や研究者ですらほとんど予測していませんでした。

戦略の策定イコール解決策だと信じられています。しかし著者は戦略計画を立てるために知力を磨くことに意義があり、策定自体を目的とし、思考停止してしまうことに警鐘を鳴らしています。
業界の動向や経済シナリオ、競合企業の強みと弱み、消費者の声や現場からの情報を収集し共有、把握すること。
それによって状況変化に応じて柔軟に対応する知恵をつけること。
宝くじのようなチャンスを追い求めるよりもはるかに確実な成長の方法といえます。

目標値の数字に振り回されて

第3章では数値による管理の問題をあげています。
1992年、「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌にキャプランらが次のような論文を発表しました。
「ビジネスの経営を成功させるためには、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長、という4つの視点の評価指標が必要となる。
この4つの指標に数値での努力目標を設定し、戦略を実行するのが理想的である」というものです。
この概念は企業幹部レベルの目標としては適切でしたが、一般の社員レベルではどのように具体的に行動すればよいのでしょうか?
その問題を満たすため、各指標をさらに細かい指標に分類する「主要業績評価指標(KPI)」という概念が生まれました。
指標を構成要素によって細分化することで組織の一人一人が自分の役割を理解できるというものです。
この指標システムは戦略の実行性を高め、組織の人員の評価も容易になるというものでした。ITの導入により数値による管理とモニタリング、進捗状況の把握が進み、完璧な管理系統システムであるはずでした。

しかし、これにはいくつかの問題点がありました。

まず、数値の信ぴょう性の問題です。
達成のために評価基準を変えてしまう事や、会計や財務報告の数字に細工を行ってしまうなどの問題があります。
また、評価項目が増えることで、評価のための労力が増大する反面利益につながらないという問題も生じます。

典型的な事業所の例をみてみましょう。

営業はノルマ達成を数字の目標としています。
その結果、期末の締切前に売り上げが伸び、その後に下落するという需要の変動をもたらすことがあります。場合によっては無理をしてでも値引きを行うため利益率に影響が出ている可能性があります。在庫切れを恐れ、在庫を多く抱えたがる問題もあります。

受注部門では正確性を重要視するため時間が遅延してしまうことがあります。

倉庫部門では需要の変動に対応するため過剰在庫を抱えるリスクがあります。結果維持管理コスト、値引き販売につながってしまいます。

生産部門は需要に応じ、製品当たりのコストを抑えるためできるだけたくさん生産しようとしまう。過剰な生産による不良在庫、原材料不足が生じる可能性があります。

物流部門ではコスト削減を目標とします。そのため納品先の同じ荷物が集まるまで発送を待つことになり、全体の時間が伸びてしまう問題があります。

このように細分化し、部門ごとの数値目標を重視しすぎると部門同士の軋轢が生じてしまいます。
結果、会社にとっての最重要目標が優先されず無意味な仕事が増えてしまいます。目の前の数字の目標が達成されることで長期的な重要な目標が犠牲にされてしまうのです。
解決策としては数値に振り回されないこと。社員が会社の最重要目標と優先課題を理解し、判断力を磨くためのツールや知識を持つこと。目標は評価の参考にすべきで管理の目標にしないこととされています。

まとめ

以上、前半部分にポイントを絞って内容をご紹介しました。
戦略策定、KPIの落とし穴などは日常の仕事の場面でも、心に留めておきたいですね。
在庫問題についてはトヨタ式を連想するかもしれませんが、アメリカの事例のため「注文しても納品までの時間が日本よりもかかるため単純に応用できない」ということが述べられていました。
個人的には「目の前のことに振り回されて長期的な目標を忘れる、って子育てにも当てはまる!!」と思いました。
本当に学ぶところの多い一冊ですので、興味を持たれた方はご一読をお勧めします。

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