今回は「プログラミング教育ってなに?」という本についてのレビューをします。
2020年から小学校での プログラミング教育必修化に向け、プログラミング教育が小学校でも導入されました。プログラミング教育もブームと言える流れですが、親はいったいどのようなことを知っておけばいいのでしょうか。この本を読むと疑問に思っていたことの答えが得られます。
プログラミング教育ってなに? 親が知りたい45のギモン [ 石戸奈々子 ]
著者と本の概要
著者の石戸氏は東京大学を卒業後マサチューセッツ工科大学研究員などを経て現在は慶応大学教授を務めています。
この本はプログラミング教育について、主に親などの保護者をターゲットに初めてプログラミングに取り組む人が疑問に思うこと45項目を取り上げてて Q & A 形式で説明しています。
本の形式はページの見開きの左側に質問と回答が、右側にその質問に対する著者の解説が書かれているというスタイルです。
内容は読みやすく、30分程度で読み終える人もいるのではないかと思います。
疑問の内容
プログラミング教育とは
プログラミング教育とは編では次のような問いとそれに対する回答、解説が説明されています。
・プログラミングとは何か
・必修化する目的は
・全員がプログラミングを学ぶ必要があるのか
・プログラミング的思考とは何か
これらの導入部分に続き、
・学校でのプログラミング教育では具体的にどのようなことをするのか
・どのような機材を使うのか
・誰が学校で指導するのか
といった問題も取り上げられています。
誤解されがちな「新しい教科ができる」という考えがなぜ違うのかということも説明されています。
具体的なQ&Aの例を挙げますと
「論理的思考力は他の科目でも身につくのではないか」という問いに対するに対しては
「はい。ただプログラミングでは効率的に学べます」という回答が掲載されています。
説明としては
”現代ではコンピューターやITに対する依存度が高まっており、コンピューターとの関係の中で論理的思考をはぐくむことも重要”であり
”コンピューターは曖昧な指示では動かないため過不足のない明確な表現での指示が必要”
”プログラミングは論理構造を効率的に学ぶツールとして有用”
であるという解説が行われています。
プログラミングの研究者である著者自身の「明確で過不足のない」解説がまさにプログラミングから得られた思考だと感じました。
家庭でのプログラミング
家庭でのプログラミング編では
家でプログラミングを学ぶとしたらどのようなことから始めていけばいいか
危険なサイトからの子供の守り方
といったことや
プログラミングをするより外で遊んだ方が良いのではないか
塾に行く必要はあるのか
といった問題にも答えています。
プログラミングをするより外で遊んだ方が良いのではないか?という質問に対しては、どちらか二者択一ではなく、プログラミングも外で遊ぶこともどちらも大切なのでバランスを取った生活を送ることが重要という返答が行われています。
はじめてプログラミングに触れる子供向けの教材
プログラミング学習の導入としてスクラッチやビスケットが紹介されていました。
初めてプログラミングに取り組む子供達には視覚的に理解しやすいビジュアルプログラミング言語がおすすめされていました。
今後の社会
今後の社会編ではプログラミングがどのような仕事に活かされるのか、入試や進学就職との関連、今後の展望などがまとめられています。
私が特に共感を覚えた点は以下の部分です。
アメリカでの研究者による「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に今は存在していない職業に着くだろう」という言葉に対する著者の考えの引用です。
自動化やコンピューターによるデジタル化の流れは今後も変わらないとする一方子供達は今までにない仕事を自ら作り出す力が求められている
65%の職業がなくなるのであれば新しい65%の職業を作り出せば良い
著者の考えに大変共感しました。
ともすれば人々の不安を煽るだけのような表現に受け取られがちなこの研究ですが私は著者の考えに同感です。
このほか、日常生活の中でプログラミング的思考を活用すること、学びを楽しむといった考えもコラムに掲載されています。
この本を読んで学んだこと
私も疑問に思っていたことが説明されていたので疑問が解けてすっきりしました。
学校でのプログラミング教育やプログラミングの考え方、家庭でのプログラミングとの関わりについて学ぶことができます。
プログラミング教室も全国に広がりを見せていますが、必ずしもプログラミングに塾に行く必要はないとされています。
ただし短期のプログラミング学習の機会やワークショップへの参加なので刺激を受けることもお勧めされています。
一方家で学ぶ環境も整いつつあるので子供たちに楽しく遊ぶ環境を整えるのが一番というのが著者の考えです。
プログラミング塾の選び方についても短いながらも説明されていますので、迷われている方はご参考になるかもしれません。
プログラミング的思考はどんな仕事に生かされるのかという疑問に対しては「全ての仕事にコンピューターが使われておりプログラミングはどんな仕事をするにも必要となっている」と解説されています。
確かにプログラミングやコンピューターはどの仕事にも大きく関与していることは事実ですがやはりどんな技術にも一部の人を 適用できないという側面はあると思います。
プログラミングもそれは例外ではありません。プログラミング的思考に適用できなかった人も上手く生きていけるような世の中の仕組みを助け合いながら作ることも大切ではないでしょうか。
まとめ
子供のプログラミング教育をどうしたらいいのか、そもそもプログラミング教育ってどういうことをするの?ということを簡単に、わかりやすく知りたい人は読むと納得することがあると思います。
著者自身の簡潔で論理的な解説は非常にわかりやすく、プログラミング思考でこういう思考になれたらいいなあ、とちょっと思いました。
プログラミングに関して知識が ほとんどない初心者の入門書としては手軽に取れる一冊です。ただしプログラミングについてもう少し深く知りたい、積極的に知識を得たいと言うのであればより詳しい内容の本が必要となるでしょう。
プログラミング教育ってなに? 親が知りたい45のギモン [ 石戸奈々子 ]
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