2020年東京オリンピックのマラソン・競歩が札幌で開催されることになりました。
この決定をめぐり、メディアの反応と、札幌市民・道民を始め地元の反応をまとめました。
オリンピック2020マラソン札幌開催案の推移
2020オリンピックマラソン・競歩が札幌で開催されるにいたるまでの経緯をまとめました。
2019年9月27~28日:ドーハの陸上世界選手権で、女子マラソンの棄権者が相次ぐ。
棄権率が40%という事態に、高温多湿の環境下での競技の過酷さが深刻な問題として浮上しました。
10月7日:IOCが森会長に札幌案を連絡
10月8日:東京五輪・パラリンピック組織委員会が五輪チケットの二次抽選販売延期を発表
10月15日:東京都の小池知事に対し、組織委員会から札幌開催案が伝えられる
10月16日:国際オリンピック委員会(IOC)が、マラソンと競歩の開催地を札幌に変更する代替案の検討を発表
10月17日:IOCのバッハ会長が「IOC理事会と組織委員会は札幌市に変更することを決めた」と発表
10月25日:IOCのジョン・コーツ調整委員長が小池知事と会談。移転案の撤回の可能性はないと発言。
10月30日:IOC調整委員会、合同会議。
11月1日:IOC(コーツ調整委員長),大会組織委員会(森喜朗会長)、東京都(小池都知事)、政府(橋本聖子五輪相)の4者協議。
2020年東京五輪のマラソン・競歩の札幌移転が決定。
小池知事は以下のように発言。
「都として同意はできないが、IOCの決定を妨げることはしない。
合意なき決定だ」
移転に伴う追加の経費は、今後も協議される予定です。
コースに関しては組織委員会が案を固め、12月上旬のIOC理事会で決定したいと発表しています。
当初札幌ドームでの発着案もありましたが、建物の構造上、マラソンのスタートなどに適しておらず改修には大規模な費用が掛かるなどの問題もあり、大通公園発着の案が有力視されています。
札幌市民・道民のインターネット上の反応
この決定を受けての、昼のあるワイドショーでの報道が
「札幌をおとしめている」
と問題視されました。
その内容とは
北海道マラソンのコースである新川通を
「日差しをさえぎるものが何もないのでつらい」
「直線道路であるため気持ちがだれる」
「東京の方が走りやすい」という発言を取り上げたというもの。
これが
「札幌をおとしめている」
と視聴者に受け取られました。
11月1日にtwitter上で投稿に「#札幌dis」という単語を用いて反論するという流れが生じました。
「dis(ディス)」や「disる(ディスる)」とは
「dis」は「disrespect」の略語で、「けなす」や「侮辱する」という意味で用いられてます。
disは否定の接頭語で、respect=尊敬 の反対の意味です。
「札幌がdisられている」とは「札幌がけなされている」という意味です。
「別に札幌が候補地として名乗りを上げたわけではない」
「東京から不正な手段で奪ったわけではない」
といったtwitterでの発言も見られ、
「札幌を悪く言うな!」という流れが産まれ、事態は炎上に。
札幌discover・北海道の魅力発信を
そんなtwitterでの流れでしたが、一部に
「札幌disなどという言葉が生まれたことは悲しい」という声も生まれました。
そして1夜明けた11月2日に
「disという単語をdisrespectではなくdiscoverにしよう」
という案が浮上しました。
twitterでは
「札幌の良いところを再発見しよう」
と、投稿に「#札幌discover」を付けて、札幌や北海道の魅力的な写真を投稿するという流れが生まれました。
多くの人たちが、手持ちの札幌、北海道関連の写真や動画を投稿し、
札幌や北海道の魅力を語るという動きに。
「青い空しかないように見えるかもしれない、建造物が東京よりも少ないかもしれない。
だからといって札幌をおとしめるような発言は間違っている」
という強い気持ちが集まって生まれました。
分断の恐ろしさ
アメリカの大統領選、イギリスのEU離脱問題。
世界中で「分断」が一つのキーワードになっています。
何かを支持する人と、それに対立する人という構図が作られ、分断されています。
しかし、今回の件で考えると、「東京(を中心とするマラソンを東京で行いたい人々)」と、
「札幌・北海道(の人々)」が対立する必要がどこにあるのでしょうか?
札幌の景観を非難したところで、札幌はマラソンのために作られたわけではなく、北海道マラソンのコースも市民の生活道路を利用しているにすぎません。
東京には東京の良さがあり、マラソン・競歩を通じて世界中に魅力を発信したかった。
その気持ちは伝わりますが、それはそれとして
札幌の立場を尊重し、お互いに相手をリスペクトするような考え方が大切なのではないでしょうか。
メディア側が「分断」をあおるような発言をしてしまうことは、
社会全体としていじめやモラハラといった暴力が蔓延する風潮になってしまうように思います。
おりしもラグビーワールドカップで銀メダルとなったイングランドが、銀メダルの受け取りを拒否する、首からすぐに外すといった行動がありました。
「金メダルを取るために来たのに、銀メダルなど受け取れない」
という心境だったにせよ、
「金メダルを取った相手を尊重し、敬意を持つ」という精神がスポーツには必要なのではないでしょうか。
今回、「分断」から「札幌・北海道の魅力を再発見する」という流れに移ることができたのは、本当に素晴らしいことだったと思います。
オリンピックマラソン札幌費用負担は?
コーツ氏は追加経費について
「東京都は札幌移転で生じる費用を負担しない」
「マラソン、競歩以外の他の競技は移転しない」
としつつ
「まだ何も決まっていない。
IOCは組織委員会、札幌市、道庁と協議しなければいけない。
負担は組織委員会が考えることだ」
としています。
マラソン札幌に批判・反対の声は?
札幌の開催を歓迎する一方、反対の声も。
意見を集計するメディアによって賛成・反対のパーセンテージは異なっているというのが印象です。
札幌市側には「辞退すべきだ」という意見が200件ほど寄せられたようです。
別メディアの集計では「歓迎だ」という意見が多数派だったとのことです。
肝心な選手側の意見を反映したものではない決定でしたが…
オリンピックのマラソンの課題
2020年の開催まで9カ月を切った段階での開催地変更という事態に。
無事に開催を終えることが第一の課題です。
・コースの選定、決定
・道路の整備
・宿泊施設、移動費用
・ボランティアなどスタッフ確保
・警備関連費用
・市役所・道庁関係者の業務負担増と人件費増問題
と課題は山積みです。
無責任に、手放しで歓迎できる問題ではありませんが、
札幌での開催が無事におわらせられることが願いです。
北海道マラソンのコースや関連の通行止め情報についてはこちらの記事にまとめています。
半日で終わる北海道マラソンでさえこれだけの通行止め、交通規制が行われます。
複数の日程にわたり、多くの来訪者が訪れるであろうオリンピックですので混乱が生じないよう対策は必須です。
まとめ
オリンピックマラソン札幌開催に伴う一連の流れとtwitterでの反応、
札幌discverという言葉の生まれた経緯についてまとめました。
disrespectからdiscoverへ。
平和の祭典としてのオリンピックへの札幌市民、北海道民の意識を世界に広めたいものですね。