日本でのコロナウイルスの検査の件数が少ないという指摘がニュースで報道されていました。
今回はウイルスの検査であるPCRの方法や精度・問題点について簡単に解説しました。
検査難民という単語が生まれた背景
TBSニュースによれば
春節時期に多くの中国人観光客との接触がある男性が
新型コロナウイルスへの感染を心配して
保健所や帰国者・接触者相談センターに問い合わせたところ
「熱も出ていないし多分大丈夫でしょう」
と言われ、自分で受診先を探したとのこと。
受診したクリニックでもPCR検査はできません。
一般的な血液検査やレントゲン検査は可能なのですが、
クリニックから民間の検査会社へのPCR検査はできないとのこと。
政府の発表では1日最大3830件の検査ができる体制は整えたとのことですが、
実際行われているのは1日平均900件程度です。
一方、韓国では1日で1万3千件以上の検査が行われているとのこと。
この検査件数の差を疑問視する声が国会や与党内でも上がっているようです。
検査件数が増えない原因は実に点で調査中と加藤厚労大臣は答弁しています。
現時点では、発熱やかぜの症状がある場合はまず帰国者・接触者相談センターへ相談することとなっています。
ただ、肺炎と診断された患者でも「渡航歴がない」場合はPCR検査を受けることができない状況です。
検査が断られるという事案もあり、キャパシティを気にしてのことか、という説も。
この状況に対し
「検査がどこでも簡単に受けられないなんて」
「まるで難民だ」
という声が一部で上がった、というのが背景です。
PCR検査とは?簡単に解説
PCR検査は「特定の遺伝子があることを検出する」検査です。
細菌やウイルスなどの微生物や、私たちの体の赤の細胞には「遺伝子」という物質があります。
微生物の種類によっては、「この微生物は、必ずこのパターンの遺伝子を持っている」ということが判明しているものがあります。
PCR検査では、検出したい微生物に特徴的な遺伝子を取り出して人工的に増やします。
ある程度以上の遺伝子が検出されれば、検体の中にその遺伝子が「ある」、つまり「そのウイルスが見つかった」ということができます。
遺伝子はそれ自体は肉眼的にみることはできませんが、
PCR検査で数を増やして、さらにその結果を見やすくするような加工を行うことで
検査結果が見ただけで判断できるようになります。
たとえて言うなら、
暗い部屋の床に一粒の砂が落ちていても、見つけるのは難しいですよね。
でもそれがバケツ1杯分の砂になって、さらに蛍光塗料で色がついていたら見つけやすいですよね。
このように「増やして見やすくする」技術が「PCR検査」です。
確かにPCR検査は信頼性の高い検査ではあるのですが、
問題点として「偽陰性」となることがあります。
これは「遺伝子があるのに見つけられなかった」としてしまうエラーです。
その原因として
・もともとの遺伝子の量が少なさすぎた
→検体の量が不足、あるいは含まれていたウイルスなどの量が少ない
・PCRのやり方に問題があった
などがあります。
また、逆に「偽陽性」としてしまうこともあります。
これは「実はウイルスはいなかったけれど、いると判定してしまった」ことになります。
どんな検査も正確さは100%ではありません。
たとえ99.9%正確な検査であっても、0.1%のエラーが起こるのであれば
1000人に一人は偽の判定を受けてしまうことになります。
これが数万人、数十万人に行われれば、数百人単位で誤判定を受けてしまう可能性がありますよね。
では、どうしたら検査の精度を上げることができるのでしょうか?
それは専門的な言い方をすると
「検査前確率を上げる」
といいます。
つまり、感染者と濃厚接触がある、中国への渡航歴があるなど
「この人はリスクが高い」と考えられる人や、
肺炎の症状がある人(どこかでウイルスに感染してしまった人)
など、ある程度検査が必要な人を絞り込む必要があります。
今回、時間がたってからウイルス検査が陽性となった患者さんもいますが
もしかしたら初回の検査ではウイルスの量が少なかったため陰性となったけれど
時間がたつとウイルスの量が増えたので要請になったというケースもあるかもしれません。
逆に
「熱もなく症状はないし濃厚接触もしていないけれど、PCR検査でウイルス陰性証明が欲しい」
という証明を求めて医療機関を受診することは適切ではありません。
「陰性である」ということを証明するのは難しいことなので、
熱や咳などの症状がある場合は適切な医療機関を受診する、外出を控える、といった行動をとるようにしましょう。
必要な人に必要な検査が適切に受けられるようにするというのが本来望ましい形です。
PCR検査検体は採取方法も決まっている
厚労省の推奨する検査検体採取法はこちらに記載があります。
https://www.niid.go.jp/niid/images/pathol/pdf/2019-nCoV_200221.pdf
痰などの検体や咽頭ぬぐい液、血液検査などが推奨されています。
まとめ
コロナウイルスの検査に関する問題やPCR検査についてまとめました。
どんな検査でも、必要な人に対して、適切に検査が行われることが大切です。
なかなかなじみのない検査ですが、ご理解のお役に立てれば幸いです。